相馬市の農業

1 .相馬市の農業

市の耕地面積は田畑合計3,320ヘクタールであり、水田面積率約80パーセント(令和4年4月1日時点)と全国平均を上回っています。平坦部は年間を通じて比較的温暖であり、冬季は豊富な日照に恵まれ、降雪も多くありません。山間部は冬季の冷え込みが厳しい反面、夏季は比較的過ごしやすい気候です。温暖な気候と豊富な日照に恵まれた本市では、稲作を中心として果樹や野菜、畜産、花きなどと様々な種類の農産物を育てることに適しており、農業が基幹産業の一つとなっております。

(補足) 水田面積率は、2,670ヘクタール(田んぼだけの耕地面積)から3,320ヘクタール(田んぼと畑を合わせた全部の耕地面積)を割った数値から算出

2.東日本大震災の影響

市の農地は東日本大震災で発生した津波被害により当時の全農地の約40パーセントに当たる約1,100ヘクタールが浸水し、壊滅的な被害を受けました。

米は市の主要な農作物の一つであり、震災前、平成22年産コシヒカリ(浜通り)の取引価格の平均は、全銘柄平均価格を超えていました。しかし震災以降、全銘柄平均価格を下回り、平成25年産は2,707円の差が生じました。平成26年以降、全銘柄平均価格との差を縮めており、令和3年産の差は1,215円です。

3.東日本大震災からの復興

(1)農地の復旧

市の農業の復旧は、農地のがれき撤去から始まりました。津波により流れてきたがれきを撤去するために、地域ごとに組合を結成し、全部で18組織の組合が活動を行いました。この組合の活動はがれき撤去のみならず、営農ができない間に繁茂した農地の除草や、水路の土砂清掃など、農地の維持に加え、周辺の環境整備も担っていました。

がれきの撤去が終了した後に待っていたのは、津波によって堆積した土砂とそれにより塩害が生じた農地でした。

農地の早期復旧のために東京農業大学協力の下で取り組まれた事業が「そうま(東京農大)方式」の復旧方法です。この方法により従来の復旧方法より早く農地の復旧ができました。

平成24年には「そうま(東京農大)方式」で復旧した岩子地区の水田(1.7ヘクタール)で水稲栽培を再開し、10トンの米を収穫することができました。この1反あたりの収量は地域の平均を超える約10俵でした。

平成26年には、約200ヘクタールの水田が「そうま(東京農大)方式」で復旧しました。約1,000トンが収穫され、「そうま復興米」として、市内小中学校の児童生徒の家庭へ配布されました。また、東京農業大学収穫祭において販売され、好評のうちに完売しました。

そうま(東京農大)方式とは

がれきだけを撤去し津波土砂をもとの土壌と混ぜて雨に当てることで除塩を行い、その後、転炉スラグを散布することによりPH値を調整する復旧方法です。

(2)法人の設立と、農業用機械の導入

農業用機械

貸与される農業用機械(トラクター)が並んでいる様子

地震や津波によって、農地や農業用機械にも被害がありました。震災直後の営農者数にあまり変化は見られませんでしたが、農業用機械の流出、津波による被害など、震災による影響や高齢化などにより今後離農者が増えるのではないかとの懸念が生じました。その懸念を解消する第一歩として各地域の農家が集まり話し合いを行いました。東京農業大学も参加し、ビジネスモデルの提案やアドバイスを受け、7つの法人が立ち上がりました。

その中の初期に立ち上げを行った3つの法人には、平成24年6月、ヤマト福祉財団の支援を受け、農業用機械の貸与を行いました。3つの法人は、市の農業再生の先駆けとして、塩害に強く、水稲に比べ設備や人手が少なく済む大豆の生産に挑戦しました。

平成25年2月には、各地で農業用機械に被害を受けた農家を中心として立ち上げた機械利用組合へ、市が補助金を利用し整備した農業用機械を貸与したことで、市の農業は復興に向けて加速していきました。

(3)農産物の検査

全量全袋検査の様子

米の全量全袋検査を実施している様子

農地の復旧、農業用機械の整備と農業の再生が進み、作物が作れるようになると、立ちはだかったことが放射能の問題です。

米に含まれる放射性物質の数値を測定し安全性を確認するために平成24年よりすべての米を対象に全量全袋検査を実施してきました。令和2年産米からはモニタリング検査へ移行しました。モニタリング検査は国が定めたガイドラインに従い旧市町村単位(中村町、大野村、飯豊村、八幡村、山上村、玉野村、日立木村、磯部村)ごとに3点実施し、基準超過が無いことを確認してから出荷制限の解除を行うことで引き続き安全性の確認を行い出荷を行っています。また、園芸品目についても県が行うモニタリング検査に加え流通前にスクリーニング検査を行い、安全性を確認し出荷を行っております。

検査を行った品目については下記の「ふくしまの恵み安全対策協議会のホームページ」で確認することができます。

なお、令和4年産米については、モニタリング検査の結果、市内全域で基準値以下でありました。

(4)農産物PRのための取組

PRの様子

PRイベントにて接客をしている様子

東日本大震災で被害を被った市の農業ですが、現在では栽培された農産物を出荷できるところまで回復しています。しかし、震災以前の価格で取引されるまでの回復には至っていません。このような状況を打開するべく、市では安全で安心な農産物をPRするために平成28年度から令和元年度までの4年間で23市町村、のべ51回、他市町村のイベントへ参加し、相馬産のお米や梨などの頒布を行ってきました。また、市外だけでなく市内で開催された相馬市民まつりや、浜の駅松川浦のイベントに参加し、相馬産農産物の頒布を行い農産物のPRに加え地産地消の推進を行いました。参加したいずれのイベントでも相馬市産の農産物はご好評をいただきました。

地産地消とは

地域で生産された農林水産物を地域で消費しようとする取り組みであり、食料自給率の向上、直売所や加工の取り組みなどを通じて農林水産業の6次産業化につながるものです。地産地消によって、生産者と消費者の結びつきの強化や地域の活性化、流通コストの削減が期待できます。(農林水産省食料産業局令和3年4月地産地消の推進についてより抜粋)

4.法人の活躍

(1)合同会社飯豊ファーム

合同会社飯豊ファームは、震災後初期に立ち上げが行われた法人の一つです。

法人設立直後は収益性の高い大豆の単作を始めました。平成26年からは、大豆、水稲、小麦の輪作、さらにはブロッコリーも導入し、経営を複合化し安定した経営を行っています。複合経営により作付けの時期が分散され、労力配分の効率化や大豆の連作障害を防ぐことも可能となりました。

飯豊ファームは、営農が困難になり作付けを断念した生産者の農地を集積することで、地域の生産者を助けるとともに、現在までで約80ヘクタールまで規模を拡大させ、地区内で最大の担い手へ成長しました。

現在も地域の担い手として地域農業を支えており、また、東京農業大学と連携し6次化商品の開発などにも取り組んでおり、今後の市の農業を担っていく法人として期待されています。

飯豊ファーム播種作業

大豆の播種をトラクターを使い行っている様子

飯豊ファーム大豆2

大豆畑の様子

(2)合同会社和田いちごファーム

市の和田地区はいちご栽培が盛んであり、東北で初めていちご狩りを行ったことで有名です。しかし、震災によりいちご狩りを受け入れていた農家に被害が及び、いちご狩りの存続が危ぶまれました。いちご狩りを存続させるために、和田地区のいちご農家で設立した法人が合同会社和田いちごファームです。

和田いちごファームは、震災により流出したいちごハウスの代わりに、国の補助金を用いハウスを新設しました。新設したハウスは、地面より高い位置でいちごを栽培できる施設となっています。地面まで腰をかがめる必要がなく、土に触れなくてよいことから、特にお年寄りや女性に人気があります。

和田いちごファームで育てられたいちごはいちご狩りだけでなく、和田観光苺組合が運営するいちご直売所でも購入することができ、開店期間中直売されるいちごは毎日売り切れになるほど好評です。

和田いちごファームでは6次化商品の開発も行っており、令和3年度には冷凍いちごの販売も開始しました。新しい6次化商品の開発も行っており、今後も更なる発展が期待できる法人です。

いちごファーム棚

新設されたいちごハウスで育っているいちごの様子

いちごファームハウス

新設されたいちごハウスの外観の様子

この記事に関するお問い合わせ先
農林水産課 農業振興係

〒976-8601
福島県相馬市中村字北町63-3 市役所庁舎2階
電話番号:0244-37-2147
あなたの評価でページをより良くします!
このページの内容は分かりやすかったですか
このページは見つけやすかったですか

更新日:2023年08月02日