メールマガジンNo.269(2012年6月18日号)防災倉庫

一カ月前から、仮設住宅の大集会所をはじめ、市内の各地区の公民館で市民との意見交換会を始めた。この1年3カ月、我々はどのようにこの震災と向き合ってきたか、初動の判断はどうだったか、放射能についての考え方や対応と今後の対策、復興への目標と具体的な計画など。パワーポイント40スライドを使って、説明と対話の集会10カ所のうち6カ所を終えたが、私の話に真剣に耳を傾けてくれる会場の表情の一つ一つが、力を与えてくれる。

いま思い返して、最初の24時間が最も厳粛で、また決断を要した時間だったと思う。この時間帯での対応が、その後の震災対策の成否の多くを決定づけた。私の決断の妥当性については後世の判断に委ねるしかないが、あの夜、寒さで震える被災者に暖を与えるために難儀したことや、清潔な水を配給できずにジリジリした思いや、避難誘導にあたった消防団員たちが帰らぬ人となったことを知った時の打ちのめされた気持ちなど、私自身フラッシュバックのように胸を過ることがある。本部長である私が、弱音を吐いたり、不安な気持ちを顔に出すことは出来ないと自分に言い聞かせつつも、心の中では大規模震災に対する備えが不十分だったことを悔いた。亡くなった人たちの無念は勿論だが、せめて、後世の市長や市民にはこんな思いはさせたくない。

震災前の防災倉庫は床面積で約600平米。毛布も非常食の備蓄も、震災の甚大さに比べればはるかに足りなかった。さらに交通の不便な場所にあるため、支援物資の受け入れ場所としても不都合だった。台風や、豪雨に伴う洪水などには対応してきたが、震災対策には「この程度ならまあまあ」という甘い考えは禁物だということを思い知らされた。実は、原発事故の間もないうちから、私は水道水のセシウム汚染を心配して、全市民に一人当たり10リットルのペットボトルの水を配れるよう備蓄してきたが、今後も常備する必要がある。毛布も市民一人につき、最低一枚分は備蓄すべきだ。その他、今回の震災で経験した必要な物資を、整然と備蓄し、また震災時に支援物資を受け取るためのステーションとなる機能的な防災倉庫がなくてはならない。

昨年8月、会津地方と新潟県を襲った洪水被害に対し、我々は義理を返そうと、水やカップ麺などの支援物資を送ったが、苦しい時に助けてもらった市町村に対する逆支援もこれからの相馬市の大きな仕事だ。

この考えについて、復興庁や関係機関の理解が得られたので、現在基本計画を設計中である。場所は八幡地区高松の市有地(4,000平米)を考えている。地元の行政区長さんたちの理解も得られたので、十分な収容能力を備え、支援物資の搬入搬出がスムーズにできる機能を持つ、この地区のランドマークとなるような防災倉庫を建設したい。

また、消防団が有事の際の地域の守り神であることも身に染みて分かった。

今回の震災でも実証されたことだが、初動では地域の事情に精通している彼らからの情報と初期対応が決め手となる。したがって新防災倉庫には、消防団の本部事務所と、消防団員待機場所兼防災教育研修スペースも備えたいと考えている。

姉妹都市である流山市、豊頃町、大樹町に加え、すでに防災協定を結んでいた東京都足立区と裾野市には言い尽くせぬくらいお世話になった。これらの自治体の他、震災後、支援を通して結びつきが強くなり新たに防災協定を結んでいただいた稲城市、小田原市、西条市、そして今後防災協定を結ぶ予定の米原市、龍ヶ崎市、知立市の消防団などの防災関係者には、是非、研修に来ていただいて、3.11以降我われが積み上げてきた震災対策のノウハウを学んでいただきたい。他にも、お世話になった自治体や企業など、相馬市の中間報告にすべて記載してあるので、どうか遠慮なくお出でいただきたい。完成までこれから1年を要するが、それまでに、市役所の担当職員たちがしっかりレクチャー出来るよう、現在教育中である。

ところで。

冒頭にも書いたが、勇敢にも最前線で避難誘導にあたり多くの人々を助け、しかしながら無念にも殉職された10人の消防団員を顕彰し、永久に市民の心にとどめるための顕彰碑を、この防災倉庫の玄関わきに建立することにした。防災倉庫に研修に来られる方々には、是非、手を合わせていただきたいと考えている。

「殉職消防団員顕彰碑建立委員会」を、消防団長を委員長として立ち上げ、市民や、日本中の彼らの勇気を讃える方々のご芳志で建立したいと考えている。何卒、ご賛同いただければありがたい。遺族や私の胸も少しは晴れる。事務局を相馬市地域防災対策室に置くが、市の事業というよりは建立委員会で造ってもらって、相馬市が管理してゆくのが適切と考えている。

彼らの残した子どもたちをはじめ、震災で親を亡くした子供たちを育てるための「震災孤児遺児等支援金」はお蔭で順調に集まり、さらに大学進学のための学資の分もほぼ集まった。次に月づき7万6千円の仕送りが出来るよう6月議会に条例を提案中である。亡くなった彼らに代わって、日本中、世界中の善意に感謝したい。

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更新日:2019年09月30日