相馬の歴史講座 「相馬中村の城下町を探る」

第8回 大手前から堀川町の道筋

武家町は殿町とも呼ばれ、『奥相志』は町口門外の四十六町に426の屋敷を記しています。屋敷割は、元禄図の地割りが『明治二十年字限図字北町図、字大手先図』(図1)の一筆区画に残り、『奥相志』の御家中名を順次当てはめると屋敷割図になることがわかります。大手前(おおてさき)に出ると、右手の桜濠の杉土手が北町の桜門へ続き、南二の丸濠と御廐濠(おんまやほり)の防塁(ぼうるい)には鉄砲(てっぽうはざま)狭間の板塀(いたべい)があり城内には古木が生い茂っていました。ここは幅4間余で重臣七家が並び、巡見使の順路となる堀川町から新馬場(現:大手先地内)、鷹巣町(現:西山地内)へ道幅が2間に狭まり、50間幅の町割になっていました。相馬家は、先の義胤公以来の豪奢(ごうしゃ)を嫌う質実剛健(しつじつごうけん)の家風があり、文化14年(1817)の藩政改革から御家中は秩禄(ちつろく)の借り上げに耐え、家屋敷は至って質素に、四足門(よつあしもん)は希で生垣で仕切る石屋根造りの家屋を庭木と菜園で囲む家並みになっていました。

大手前の角の猫堀で分ける1,800坪余は利胤公の功臣門馬修理進(しゅうりのしん)に下賜(かし)され、四郎兵衛代には断絶して延宝三年(1675)に長友より堀内大蔵が移り、維新後は学校用地(現中村第一小学校)となり会所町に築山と池を残しました。南側東端の1,100坪余は原八左衛門の屋敷がありましたが、元文二年(1737)に江戸詰中の罪科で断絶し、幾世橋専馬の名跡(めいせき)を継いだ兄門馬兵左衛門が入り作左衛門を名乗りました。大正期の御野馬追出陣の写真では、タマツバキの生垣に飛び敷石で二足門から玄関へ導く様子を伝えており、現在は市役所庁舎が建っています。不明門(あかずのもん)前口の1,400坪余は熊川兵庫(くまかわひょうご)邸で、文久三年(1863)に江戸詰の村津貞兵衛に394坪を譲り、砂子田の中屋敷東隣の601坪と換えています。

西側は板塀となり大手前側の百日紅(さるすべり)脇の四足門から板葺の式台玄関に続いていました。ここも学校用地となり、今は市民会館が建っています。会所町は西街道口で幅6間あり、東側南端は天保中(1830〜1843)に関勇蔵を北町へ移し、ここに講所を建て海東友輔(かいとうともすけ)邸としました。南隣の1,000坪余が藩庁で右に目安箱、左に鐘楼があり、給人が夜九つと暁九つの時鐘を打ちました。ここに家老の御用番と御一門の加判(かはん)の下に郡代と月番役人が詰め、御家中の家督と役替、出奔と不調法の裁定から御城米(ごじょうまい)と御趣法品(ごしゅほうひん)を評議して殿様へ御伺を立て、桜田屋敷へ御用状で届けました。

藩政は文久3年(1863)3月の急参府から二条城加番(かばん)、更に、江戸城西之丸御門番と続き多忙を極めました。幸い御仕法の発業は御趣法品の売却が支えて出米が増加し、西国の回漕が途絶えると元治元年(1864)正月に江戸米相場十両十俵、一升二百文で相馬米一俵三斗二升は一両に高騰しました。この時に江戸の蔵元衆で御用人格の橋本清右衛門が「今後もお見限り無く」と兵庫に漏らした様に、借財はありませんでした。また、慶応元年(1865)正月の出米が十万俵を越え、天明((1781〜1788)以来始めて御物成(おものなり)は4割5分に戻り、遂に充胤公代に藩政改革は成就して富国強兵を計っていました。

堀川町と新馬場は、明治12年(1879)の中村街道(現:国道115号)開通で消滅します。旧道は鐘楼跡の水路の延長170間先で鷹巣町へつなぐ道筋となり、半間幅の堀川の両側に一間半の道があり、南側の中小路と西小路へ石橋で渡し、上士の屋敷が並ぶ新馬場の桜土手に続いていました。

※町口:町の出入り口
※狭間:物と物とのあいだの狭い所
※豪奢:ぜいたくで、はでなこと
※質実剛健:かざりけがなくまじめで、強くたくましいこと
※秩禄:給料
※下賜:くだしたまわること。
※名跡:受け継ぐことになっている家の名
※一門:一家族または同家系の一族
※加判:政務を執る職に列するもの
※出奔:逃げて跡をくらますこと
※不調法:しくじり
※城米:幕府が諸藩に命じて軍事・飢饉に備えるため貯蔵した米穀
※加番:江戸時代の職名で、城の警備などを任された
※蔵元:江戸時代、蔵屋敷で商品の売買を代行し、蔵物の出納にあたった商人
※御物成:収穫の一部で納める年貢


図1:明治二十年字限図字北町図、字大手先図

※図をクリックすると、PDFファイルが開きます。

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図2:慶応元年 相馬中村城外屋敷割略図

※図をクリックすると、PDFファイルが開きます。

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執筆:南部孝之(相馬郷土研究会)


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