相馬の歴史講座 「中村城」

第10回 中村城の野生植物

「中村城の植物」といえば、多くの人は市指定天然記念物の相馬中村神社の親子スギや、長友グラウンド沿いの染井吉野の桜並木を思い浮かべるのではないかと思います。これらは昔に人が植えた植物で、歴史的、景観的あるいは文化的に価値があるものです。今回紹介するのは中村城に自生する野生植物で、本稿では生物多様性から見た中村城の価値について論じたいと思います。

意外に思うかもしれませんが、城にしばしば貴重な植生が残っていることや、希少な植物が生育することがあります。都心にありながら森林や湿地などの豊かな自然を残し、タシロランなどの極めて珍しい植物が発見されている皇居、300年を越えるモミの巨木からなる原生林を有し、一部が国の天然記念物に指定されている仙台城(青葉城)は別格としても、原生林に近い姿の植生が見られる、あるいは絶滅危惧植物の生育が確認される城は多いものです。中村城も例外ではありません。

相馬中村神社の西側から北側にかけて、冬でも鬱蒼(うっそう)と葉をつけた常緑の広葉樹の林があります。優占しているのはアカガシで、厚めの落ち葉が林床を被っているなど、市内で見られるコナラを主体とする他の林と趣がだいぶ異なります。林床にはヤマツツジ、イヌツゲといった低木や、ギンリョウソウモドキ、キッコウハグマ、タマブキといった草本など、森林生の植物が比較的豊かに見られます。相双地域の平野部は、もともとアカガシなど常緑広葉樹林によって被われていたと考えられていますが、伐採や開発などによりほとんどが失われてしまいました。中村城のアカガシ林は、残された大変貴重な林です。また、この林より北でまとまった数のアカガシが生育しているのは、仙台城跡の青葉山植物園のみで、分布の面でも注目される林です。

堀に生育するカキツバ

堀に生育するカキツバタ

もう一つ、生物多様性の面で価値の高い場所として、堀および蓮池が挙げられます。5月頃、中村第一小学校の向かいなどの堀や蓮池には青い花のカキツバタが点々と見られます。カキツバタは湿地の開発等で全国的に減少し、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されたこともある植物です。この他にも蓮池のヨシ湿地に生育するミクリなど、比較的珍しい湿地生の植物がいくつか見られます。一方で、黄色い菖蒲であるキショウブと水生植物オオカナダモの2種の環境省指定の要注意外来種が大繁茂するなど、外来種の悪影響が強くなっています。生物多様性や景観の保全の面から、水質改善や外来種の駆除などの管理が必要と思われる場所でもあります。

中村城に見られるこのような貴重な植生や植物は、城の防御上人が入るのが制限された上、その後も大切な史跡として伐採や開発、大きな改変を免れたために成立し、現在まで残ったものと思われます。市街地の中にも関わらず、歴史的背景から奇跡的に貴重な植生や植物を残している中村城を、このままの姿で後世に残したいものです。

執筆者 黒澤高秀氏(福島大学共生システム理工学類)


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