市長エッセー

NPO法人「ライフネット相馬」のこと

2003/12/19

I地区に住む横山さんは85歳。

「二年前じいちゃんをなくして以来、朝夕の仏前へのご飯を欠かしたことはない。60年住み慣れたこの家で、仏前に座りじいちゃんとの朝夕の会話を一番の生きがいにしている。東京に住む息子は、いまさら母親のために彼の社会生活を捨てるわけにもいかないので、東京に引っ越してこないかと言うが、相馬のこの家とお墓を残して知らない土地に行くことなどとても出来ないし、なによりもこの家の茶の間はじいちゃんとずっと守ってきた私の城なのだ。
でも最近はひざの調子が悪くて立ち上がるのも大変だし、掃除機をかけていると転びそうになる。庭の草むしりなどとても出来ないので、あんなに手入れしていた庭も荒れ放題。近頃は食事をつくるのも骨が折れるので簡単に済ませるようにしている。歳をとっての一人暮らしは不自由だし、訪ねてくれる友達もみんなからだの調子が悪いらしくてめっきり少なくなった。週に二回ヘルパーさんが来てくれて、家事のお世話をしてくれるようになってから、話し相手にもなってくれて本当に助かっているんだけど、誰とも話をしない日のほうが多くなった。淋しいなら施設に入ったらといってくれるひともいるけれど、やっぱりじいちゃんの仏壇に毎日ごはんと線香をあげなきゃいけないと思うと、この家を離れる気がしない。」

「そんなある日、地域の若い人たちが朝と夕方、様子を見ながら声を掛けに来てくれるという。若いといっても退職した人たちだからみんな60は過ぎているのだけれど、私から比べればずっと若いし、とても元気な人たちばかりで息子と同じ年頃に見える。なんでも私の調子が悪そうなときは看護婦さんを呼んでくれるんだそうな。 できれば施設には入らないで、ここでじいちゃんとずっと一緒にいたいと思っていたし、息子に迷惑もかけられないとも思っていたので、いよいよ動けなくなったらと思うと不安は尽きないのだけど、これでもうしばらくこの茶の間でじいちゃんと話ができると思うと、とてもうれしい。
私も若い頃にこうやって、今の自分のような老人の世話をしていればよかったと思うけど、あの頃は自分ひとりでやったって責任がもてないと思って、気持ちだけで終わってしまった。せめて20年前にこんな活動ができるグループがあったらよかったのに。」

ひとり暮らしのご老人のお宅に声かけ訪問をしようとするなら、責任重大である。なぜならその人の善意が善意であり続けるためには、最後まで継続する義務があるからだ。途中でやめるなら最初からしないほうがいい。しかし、なんとか老人福祉に対して役に立ちたいという、ボランティア意欲をお持ちの市民の方にお会いすることが多い。そのような気持ちを生かしてゆこうとするとき、継続性や活動の質、さらに相手の体調が悪かったときの対応などを保障する体制をとってから活動に入らないと、無責任に終わってしまうこともあるだろう。NPO法人「ライフネット相馬」はそれらの課題を解決して、安心して市民の方々が老人福祉ボランティアに参加できるために結成された。

 

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