市長エッセー

豊かな人生

2003/11/07

相馬市医師会長の彼は63歳。
五十を超して診療の合間に描きだした絵画で、今回日展に入選した。
もちろん持って生まれた才能もおありだろうが、多分無心に、一生懸命キャンバスに取り組んだ成果だろう。絵画に関して特に専門的な教育を受けたこともない、市井の趣味人の快挙に拍手を送りたいと思う。

医師としては大学の助教授まで勤められた有能な方だが、その技術や名声と、ご自分の人生を別ものと考えているところに、人間としての豊かさを感じる。

医師というのは危険な職業である。夢中になって医療に取り組んでいるとうちに、自分の全人間性の一部で医師をしているのか、あるいは医師であることが自分のすべてなのか、わからなくなってしまう人がいる。

病気というのは人生の一部なのだから、人を見てから病気の対応をしないと、木を見て森を見ない例えと同じ。

訴訟社会はひたすら専門性を要求し、特に若い医師たちは木だけを見つめようとしている人が多いのではないか? 引くことや、逃げることや、他人に任せることも時には必要だし、反対に全人格をもって、他人の人生と向き合わなければならないこともあるというのに。

キャンバスに向かいながら彼は、医師として、素晴らしい訓練をしているに違いない。

生涯学習という、金太郎アメのような行政のうたい文句も、こんなに生き生きと実践し、豊かな人生を創れる人がいるのだから、もっと本気で取り組まなくてはならないと思う。

 

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