市長エッセー

2014年頭にあたり

2014/01/06

あけましておめでとうございます。

年末の市長選挙で再選されましたので、今後とも日本をはじめ世界中のご支援を得ながら、市民とともに東日本大震災からの復興に取り組んでまいる責務を担いました。これまで同様に宜しくご指導のほどをお願い申し上げます。

震災は郷土の光景を一変させただけでなく、多くの人々の生活を一瞬にして奪い去り、当事者はもとより、私をはじめ関係者の人生観・世界観を大きく変えてしまう出来事でした。発災後2年と10か月を迎えようとしていますが、復興は未だ道半ばです。我われ相馬市は被災後策定してきた復興計画に基づき概ね計画通りに事業を進めてきましたが、基本的なハード事業だけでも今後2年あまりを要します。それまで被災者、特に災害弱者の方々の生活を支えながら次の時代に向かって前向きに歩んで行かなければなりません。

現在でも仮設住宅で数多くの市民が暮らしており、これから逐次完成する災害公営住宅で落ち着いた暮らしを始めるまで、精神・健康の安定を維持しながら人々が孤独にならないよう、コミュニティの運営とサポートを行ってまいります。
その上で、新しくできる災害公営住宅の集落にも、震災の際に大きな力となった地域コミュニティをしっかりと形成して、一人ひとりが安心して、安全で穏やかに暮らすことができる環境を作ってゆく必要があります。新しい地区の行政区としてのサポートの仕組み、買い物や通院等の利便性の確保、健康管理など、できるだけしっかりとした支援体制のもとで、新たなコミュニティを構築し、被災者の新しい生活を支援して行きたいと考えております。
特に、震災で独居となった高齢者のためには、孤独になることによる人生への不安・寂しさから、人々の温もりを共有できるようにと井戸端長屋を5棟完成させましたが、今後は運用面において気を配ってまいります。

また子どもたちのためには、これまでも徹底して行ってきた放射線対策を継続してゆくことは勿論のこと、PTSD対策等の精神的なケアを行うことで、子ども達が将来を担う人材として健全にそして健康に育つよう、配慮してまいります。特にPTSDが10年後に再発する傾向にあることや、チェルノブイリではやはり10年後に内部被ばくが再燃した事例などをかんがみ、これらの対策はしっかりと継続する必要があります。また学力向上に努めるとともに、被災に負けない強く豊かな心を持った、将来的には社会的競争力のある子育てを目差します。

そして生産年齢層の皆さんのためには、住居等の生活の場の確保を急ぐとともに、可及的速やかな産業の復興と振興を図ることにより、生活基盤を安定させ、人生の再建に資するよう、社会資本の整備と放射能対策などのソフト事業を展開してまいります。

上記の理念を実現するための今年の具体的な政策を以下に列記します。

1. 現在整備中の災害公営住宅を早期に完成させることと、入居後に形成される新しい集落のマネジメント体制を、すでに入居の完了した明神前住宅をモデルケースとしてPDCAサイクルにのっとり構築すること。
また仮設住宅のリヤカー部隊に替わるチャルメラカーによる買い物弱者対策などに努めること。また健康診断を積極的に行い、仮設住宅での課題と対策に対する検証を行い、積極的に健康対策に努めること。仮設住宅からの引っ越しと、いずれ撤去する仮設住宅の整理について、今から住民との話し合いを始め、十分な準備を行うこと。

2. 建築制限地域以外の被災地の生活環境を整えること。
ポイントは安全・安心な住民生活とコミュニティの維持・継続です。これまで被災した各地区に防災集合所やコミュニティセンターを整備してまいりましたが、戸数の多くが津波で流出して集落の維持が困難となった南原釜地区でも同様に整備し、南・北原釜地区住民のコミュニティ構築を支援してまいります。また次の震災に備える為、災害警報システムを市内全域に整備します。さらに市内全域の防犯灯を、環境省の支援を受けてすべてLED化します。相馬市の夜間の安全のための新たな街灯設置にも取り組みます。

3. 地盤沈下対策。
岩子地区は地盤のかさ上げにより雨水対策等の生活環境の改善を図ります。細田・松川の両地区は、大雨等で冠水する現在の状況からできるだけ早期に復旧できるよう、護岸の整備に加え、それぞれ排水ポンプ場を着工します。

4. 一次産業の復興に向けての施策。
本市の基幹産業の一つである漁業は、原釜の荷捌き場等が津波で崩壊するなど、漁業関連の施設が消失しました。これらの復旧を第一として、新たな施設整備に取り組みます。一例としては、原釜地区に既に4棟整備した漁労倉庫に現在建設中の7棟を加え合計11棟の、松川浦漁港を利用する漁業者の就労拠点とします。また磯部地区の漁業者からの要望を踏まえ、磯部大洲地区に16世帯の大型漁労倉庫を着工します。あわせて同地区に計画してきた水産加工施設を着工し、漁業及び関連産業を支援してまいります。原釜・松川地区の加工業者の皆さんから、民間業者の団体による加工工場建設への支援の要請がありましたが、運営体制の確立を待って積極的に支援したいと考えております。
また、農業については、東京農業大学のご支援をいただき、農地の復旧復興、新しい農業経営形態を進めてきました。津波の被害を被った水田の除塩、がれき撤去など、地元農家と一体となった作業を進め、農業法人の設立を支援し、農業機械の無償貸付を行ってまいりました。今後、さらに作付可能な水田を増やすとともに、販路拡大を始めとする六次化に農林水産省、東京農大とチームとして取組む他、TPP問題や減反政策の見直しなどの新たな課題も見据えて、農業の振興に努めます。

5. 子どもたちの将来のための施策。
子どもたちのPTSD対策の拠点施設として、現在建設を進めているLVMH子どもアート・メゾンの完成を待って、心のケアと豊かな心を育む情操教育をはじめとする子どもたちの健全育成のために、利活用を図ってまいりたいと考えています。災害公営住宅の整備等により、子どもの増加が見込まれる、中村第二小学校の学区内に子ども公民館を着工します。この施設は、子どもたちの生活・学習支援はもとより、保護者をはじめとする地域の方々の世代間の交流拠点として活用する予定です。

また、世界中からのご支援による教育復興子育て基金を活用した各小中学校独自の学力向上策への支援や、東京大学のご協力による、仮設住宅の小中学生を対象とする「相馬寺子屋事業」、市内中学生を対象とする「相馬育英館事業」などの市独自の学力向上策、さらには、エル・システマジャパンのご協力による音楽を通した情操教育などに取り組んできました。これらの事業は、財源の確保に努めながら、今後も積極的に取り組んでまいります。
震災後の子ども達の体力低下と原子力発電所事故により、屋外プールが敬遠される現状を踏まえ、光陽クリーンセンターの予熱を利用した屋内温水プールを着工します。
なお、震災で被災し取り壊した川沼体育館は、市民からの強い要望があることから、震災前の規模で復旧するための具体的設計に着手します。

6. 交流人口の拡大。
観光資源としての松川浦の風光明媚な風景が失われた今、交流人口確保は相馬市にとって急務です。震災前から、光陽パークゴルフ場や、ソフトボール場により県内外からの誘客を図ってきたスポーツ観光を、更に充実させてまいります。ソフトボール場は今年の秋に県市町村対抗大会が開催決定していることを踏まえ、グランドの整備や照明、外野フェンス整備などを着工します。
現在整備を進めている相馬光陽サッカー場をより有効に活用するため、人工芝コートに夜間照明を整備するとともに、クラブハウスとして利用可能な復興交流支援センターを着工し、サッカーによる交流人口の拡大を図ってまいります。
情報の発信とスポーツ大会の宿泊の手配や復興視察等に対応するため千客万来館を着工し、旅館や商工業者と連携しながら、本市を訪れる方の受け入れ体制を構築します。
また、耐震に問題があることから建て替えを予定している市庁舎と千客万来館は和風建築とし、中村第一小学校、スポーツアリーナ、市民会館、歴史資料収蔵館、郷土蔵と併せ、城下町としての風情のある、相馬市のイメージを高めるような行政ゾーンを形成し、本市振興の一つのシンボルとしてまいりたいと考えております。

7. 放射能対策。
原発事故後、相馬市は東京大学医科学研究所の上昌広教授、同国際保健政策学の渋谷健司教授、同物理学の早野龍五教授らのグループと連携して、詳細な空間線量検査と、内部・外部被ばく調査に基づく対策を立てて実行してまいりました。それらの情報は逐次ホームページで公開してきました。特に子どもたちの被ばく調査は内部・外部被ばくとも子供全員について調べて、結果に基づき除染や生活指導を行い、少なくとも相馬市では健康被害が一例も発生しないようにとの決意の下、徹底した対策を行ってきました。国が定める処の「長期的には追加被ばくを年間1ミリシーベルト以下にする」という目標に向かって、子どもたちの被ばく線量調査結果を基準として対策してきました。放射線に対しては大人より子どもの方が敏感で障害も発生しやすいという仮説に従えば、子どもたちの健康を放射線から守るために全員検査のうえ対策を行い、年間1ミリシーベルト以下を一日も早く達成することが急務と考えたためです。
昨年末現在、8人の子どもが1ミリをわずかに超えていますが、これらのケースに対しても対策を徹底して今年中には1ミリを下回るようにします。また内部被ばく検査は、摂食する食材がシンチレーションカウンターでND、つまり放射線が検出されないことを大前提にして注意を呼び掛けてきました。その結果相馬市の子どもには内部被ばくで検出されている子どもはゼロです。これは福島県の風評被害対策にもつながることと思っています。しかしながら、気を許すとチェルノブイリの実例のように10年後に再燃と言うこともありますので、学校検診に取り入れながら厳しく対応してまいります。甲状腺がん検査については、発災後の各種調査論文を踏まえ、2年に一回、18歳以下の県民全員を調査するという福島医大の調査結果に基づき対策することにしました。渋谷健司教授は相馬市の健康対策専門部会の委員ですが、福島県の甲状腺検査評価部会の委員でもありますので、十分な連携の下に、特に二次検査の追跡調査を踏まえて対策してまいります。
放射線教育も大切なことと考えております。2011年から各地域の公民館で住民の方がたに対し放射能についての公開講座を行いましたが、中学生には特別講義で放射線障害の基礎知識を勉強してもらいました。昨年秋には相馬高校でも実施いたしました。今年は相馬東高校の理解を得て実施いたします。「放射能から如何にして自分の健康を守るか?」という目的からすれば、正しい知識を得て、データを正確に理解し対応能力を身に付けなければなりません。今後多かれ少なかれ放射能問題と向き合って行かなければならない福島県民としては、知識で自分を武装する必要があります。
次に、空間線量調査や外部被ばく検査に基づき除染した枝葉や農業系の廃棄物の処理の問題があります。本来、原子力発電所は国策であり、原発事故まで一切のメリットが無かった相馬市にとって、国の責任で相馬市から排除してもらいたいのですが、待っていてもその目途は立たず、除染と言っても自宅の庭先や集落のなかに積み重ねている状態では、排除したことになりません。
ガレキ焼却のための仮設焼却炉は近隣の工場のご理解を戴いて工業団地東地区の市有地に造りましたが、私はガレキ焼却の度に煙突からセシウムが排出されないかどうか連日測定してもらってきました。200回を超す測定の結果セシウムの排出は皆無でしたので、昨年11月には除染した枝葉を試験焼却しました。その結果、やはりセシウムの排出は認められませんでしたので、焼却によりセシウムの飛散がないということを大前提として、今月末から除染枝葉を仮設焼却炉で灰にします。したがってセシウムの飛散が認められたら直ちに中止します。灰は厳重管理の下、相馬市の災害廃棄物中間処理施設内の仮置き場に厳重に保管します。隣接する工場の方々には、科学的なご判断の上ご理解を戴いたことに心から感謝申し上げます。

8. これからの相馬市に向かっての取り組み。
震災からの復興を進めるとともに、本市にとっての新たな産業の創造も視野に入れて今後の地域振興を考えてゆかなければなりません。原発の危険性については、今さら申し上げるまでもありませんが、私たちの社会が原子力とどのように関わっていくべきかという議論もさることながら、当地域には相馬港の用地に新たに天然ガス基地建設計画があります。石油資源開発株式会社による4号埠頭用地へのエネルギー基地建設計画が昨年末に発表になりました。
そして、天然ガス基地が建設された際は、相馬港利用促進協議会会長として、また、東北港湾都市協議会副会長として相馬港の利活用促進を図るとともに、天然ガスを比較的低炭素なエネルギー源として、我われの地域の地域振興につなげるよう活動してまいりたいと考えております。今後、この動きを活発化させ新たな産業創出に取り組んでまいります。
また新たな企業誘致の取り組みも動きが出てまいります。現在誘致活動中のビジネスチャンスに対し全力で取り組んでまいります。
さらに本市の将来を見据えた場合、相馬と福島を結ぶ高規格幹線道路の整備促進は、大きな意味を持つものと考えております。さらに震災、原発事故によって停滞した常磐自動車道の全線開通、被災した相馬港などの整備とJR常磐線、国道六号の復旧など、これらの課題に取り組んでゆく必要がありますが、積極的に国・県に働きかけてまいります。

以上、今までの取り組みを踏まえた今年の事業計画を大まかにご紹介いたしましたが、次回の復興計画改定に合わせて、さらに詳細を検討し、復興対策会議、復興顧問会議の議論を経てホームページで公開したいと考えております。
拙メルマガを購読されていらっしゃる皆様にとって、今年一年が充実した年となりますようご祈念申し上げます。

 

前のページへ戻る

ホーム > 市長室 > 市長エッセー集 > 市長エッセー