市長エッセー

相馬市の子どもたちを放射能から守るために

2012/02/23

震災、原発事故からもうすぐ一年になろうとしているが、ハードの上での復興は果たせても、長期に亘って徹底した対策が必要な課題は子どもたちへの放射能問題である。

まず、放射性物質拡散直後の放射性ヨードの問題。これは半減期8日ときわめて足が速いので、今の段階ではどのくらい被ばくしていたかを調査することは不可能である。チェルノブイリとはちがって、海洋国家の日本では栄養的にヨード不足は考えにくいという学者もいるが、こればかりは甲状腺がんの検査体制を整えて、発症していないということを毎年実証して行かなければ解決しない。常識的には3〜4年後あたりから毎年、子どもたち全員に超音波検査を実行する必要がある。気の遠くなるような話だが、検査体制づくりには今年から着手したいと考えている。

次に内部被ばく問題。南相馬市のホールボディカウンターの多くの検査結果および相馬市のサンプル検査から、震災直後の内部被ばくは量的には小さかったということが分かった。セシウム137の生物学的な半減期により算出される預託実効線量からは、少なくても不安神経症に駆られるような数値ではないと考えられる。この点は放射性物質を浴びた牛乳や野菜果物に、いち早く出荷制限(スーパーなど流通過程)をかけた県の対応が効奏した。
しかし、学校での給食調達食材が、どのようなチェックを受けてきたのか不安だというご父兄もいるので、先月より給食の食材をまとめて市役所のシンチレーションカウンターで調べ始めた。さいわい全ての給食が検出限界値以下だったが、今月からは市内の全小中学校に導入し、給食を作る前に食材の全例を検査している。また、公民館にも配備して地区住民が摂食する食材を、それぞれのご希望により計測している。この問題については、震災直後からしばらくたって、気持ちが緩んだ時にこそチェックが必要なので(現在は住民の方々の不安対策の意味もあるが)市としては5年とか10年とかの長いスパンで調査と注意喚起をしていきたいと思っている。

外部被ばくについては何処をどのように除染するかを決め、また効果をその都度検証して方法論を改善しながら進めなければならない。一般生活領域の空間線量検査は1キロ、場所によっては10メートルのメッシュ検査を行った上で、我々は子どもたちの通う小中学校については一校当たり50か所の詳細調査を月2回ずつ行ってきた。その都度対策を講じてきたが、問題はセシウム汚染土の仮置き場だった。一般ごみの焼却灰の処理も含めて、仮置き場確保は重大問題だったが、相馬共同火力発電所の協力を頂いて、石炭灰の産業廃棄物処分場の一部を仮置き場に使わせてもらうことが出来るので、除染計画を躊躇することなく進められる。現在、搬入に向けて工事中である。

外部被ばく回避のためには、高線量地区の空間線量の低減が基本方針だが、肝心なことは、その結果子どもたちがどの程度被ばくしているかを検出し、適切な対応を速やかにとっていくことである。当該家庭には丁寧に説明しながら、除染も実測値に基づいて優先順位をつけて、実効性のある作業をして行かなければならない。またここで言う適切には、過剰に心配して副次的な健康障害をもたらさないことも含まれる。

相馬市の中学生以下の子どもたち4000人を対象に、10月から12月まで測定したガラスバッチの結果(年間換算)が出たので、個人個人に通知し、相対的に高い子どもたちの家庭や生活環境に対しては優先的に除染を行うことにした。さいわい5ミリシーベルト(以下シーベルトを略)を超えるケースはなかったので、今すぐに健康に被害をもたらすレベルの子どもはいない。しかし、子どもの場合政府が決めた一般的な数値、すなわち年間20ミリ以下なら安全とはとても思えないので、さらに安全値を下げて対策を講じなくてはならない。文部科学省では学校での外部被ばく総量を年間1ミリ以下にするという目安を発表したが、これはあくまで学校の滞在時間での被ばくの議論であり、ガラスバッジのような子どもたちの全生活についての基準ではない。また地域全体の除染は年間線量1ミリ以下を目指すとしているが、子どもたちが実際にどのくらい被ばくしているのかが問題なのだから、除染と対策を進める上では、実際の子どもたちの被ばく線量を示すガラスバッジの数値は非常に説得力がある。相馬市では被験者数4010人のうち、年間2ミリ以上が33人いた。学校生活での被ばくの限界線量が1ミリであるということを踏まえると、全生活では2ミリを一つの目安にすれば安全に近づくと考えたが、ぎりぎり危険値を大きくとって1.6ミリ以上は経過観察対象としたいと考えている。このグループに属するご家族の生活領域全般が、除染の最優先実行先である。線量の高い場所を遊び場にしているとしたら、行動範囲も含めた生活指導も必要となるが、線量値の説明も含めて、これらは個別面談説明形式で行いたい。除染などの対策を行った上で、再調査をしながらメンタルなケアを含めて徹底的なフォロー体制をとりたいと思っている。
当然ホールボディカウンターでの調査も併せて施行していく必要がある。ホールボディカウンターは5月に一台入荷してくるが、公立相馬病院が外来棟建て替えを前にして手が回らないというので、相馬中央病院の医師たちに依頼した。35平米のスペースを提供してくれるので、東大物理学教室、医科学研究所の両教授を含めた放射線対策専門部会と連携のうえ進めたい。

 

前のページへ戻る

ホーム > 市長室 > 市長エッセー集 > 市長エッセー