市長エッセー

エムセテック社ポリシリコン原料工場火入れ式

2007/04/20

私が松宮社長に初めてお会いしたのは、今から2年半前の平成16年の9月のこと。
突然のことだったが、宮城県山元町のポリシリコン加工工場が手狭で、新たに工場を立地するための用地を探しているとの連絡が入ってきた。最初は何を創っている会社なのかも分からず、とにかく社長さんにお会いして、誘致を働きかけるかどうかはそれから決めようと思った。
M-SETEKとはMatsumiya's semiconductor technology。つまり松宮社長と半導体技術の頭文字をとった社名で、シリコンの加工工場とだけ聞いた。何の加工かというとポリシリコンという半導体の原料から太陽光発電のウエハー(薄い板)を作って世界中に輸出しており、近年の太陽光発電の需要の高まりにより急成長している企業だという。とりあえずの知識で松宮社長にお会いして事業理念を伺うことにした。

松宮社長の太陽光発電にかける意気込みは、未来の地球環境を救うのだという理想にあふれていた。社長によれば全世界の電力需要は福島県の10倍の面積のソーラーパネルを敷き詰めれば足りるのだそうだ。地球温暖化は人類の生存さえ危うくさせる重大事だが、日本はまだまだマーケットが成熟していないので世界を相手にしたほうがビジネスになる。現に最大の得意先はBP(石油4大メジャーのひとつ、英国の巨大企業)で、すでに2010年まで受注をもらっているという。業態といい、成長性といい、私も企業誘致の対象としては格好の企業と思い議会に相談したら、「是非われわれの相馬市で事業を展開するように、市長は全力で誘致に努力してくれ」という全議員の意見だった。
ちなみに日本では原発の売電単価はキロワットあたり7〜8円、石炭火力で11円程度なのに対し、風力や太陽光発電のクリーンエネルギーは23円。ずいぶん優遇されているようだが、ドイツでは84円だという。したがってBPなどの石油資本が商社として太陽光発電のシリコンウエハーを買い付けて、欧州に輸出するのだそうだ。現に私もこの2年の間、エムセテック社を訪ねてきたBPやアメリカの商社たちの訪問を受けているが、かれらは異口同音に松宮社長の事業に対する期待と投資意欲を示した。

しかしシリコンウエハーの原料となるポリシリコンが世界的に品薄で、加工工場を創っても空回りになるので、先ず原料工場を立ち上げなくては量産できないという。はじめ加工工場用に14ヘクタールの工場用地を取得してもらったが、原料工場はその2倍程度の用地面積を必要とするから市長に協力してもらいたいということだった。それで、土地を購入したけれど未立地の企業から相馬市が用地を買い戻してエムセテック社に転売したり、当該用地の中心にある小工場には地主である中小機構基盤整備機構の計らいで移設してもらったりして、結局51ヘクタールのまとまった土地を提供できたのが平成18年の1月だった。
こうして用地の全容が固まったのを機に、松宮社長は巨費を投じて巨大工場の建設に着手する。東日本初のポリシリコン工場ということもあり、技術的にも相当な苦労があったようだが、4月12日、やっと火入れ式までこぎつけた社長と市長の私が、一緒にスイッチを押す日を迎えることができた。
もちろん苦労の大半、ストレスのほとんどは社長が背負ってきたものである。しかし誘致をすすめるなかで大きな信頼をいただいて、いささかなりとも苦労を分かち合ってきた私としては、二人で火入れ式の点火をすることができて感無量だった。社長もハンカチで目をぬぐっておられた。

次は生産物であるポリシリコンを加工する工場群の建設。
松宮社長によれば原料工場の周囲を加工工場で埋め尽くすのだという。そして2種類の工場群が稼動する日を迎えることができれば、相馬市は太陽光発電産業の拠点として地球環境の将来に大きく貢献する都市となる。
そんな希望が現実味をおびて来た。次の私の仕事はこの産業を支える人材育成である。

 

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