市長エッセー

地方創生

2014/12/31

12月26日の年末の市長訓示で、「9日間の正月休暇の間に地方創生のための政策を各々、市長になってつもりで考えてくるように」と話したところ、27日に政府は4200億円の予算とともに、基礎自治体にも15年度中に地方版総合戦略を策定するように求めた。
日本創成会議が5月に発表した自治体ごとの将来人口推計は、地方の漠然とした将来不安に対する強烈な一撃だったが、今回は小規模自治体にも配慮したかのように表現しつつも、実は、「将来像と具体策を示して努力をしないところは切り捨てますよ」と、「選択と集中」を迫りながら自治体の尻を叩いている。おそらく年明けとともに各自治体が一斉に交付金獲得に走り出すだろう。

一年前の市長選挙で私は、「復興と新しい顔を持った相馬市づくり」を掲げたが、時代は50年先の将来像に対する現在の努力を求めている。13年前、市長に就任した際に、「相馬市が相馬市であり続けるために」と言って行財政改革に励んだが、守りの姿勢だけでは地方都市の存続が危ぶまれる時代になってきたと考えるべきだ。

地方創生を分解すると、「産業活性化などによる雇用、教育も含めた子育て環境の整備、交流人口の増加、老人福祉や医療も含めた生活しやすい環境」を調えて、将来共に若者が定住し子どもが増える地域社会、ということになる。
しかし、これ等のことは今までも行政課題として十分に意を尽くしてきたことなのだ。特に一番影響が大きい要因は雇用創出である。合計特殊出生率(2013年1.43)と完結出生力(結婚した女性が一生に産む子供の数の推計値、だいたい2.00前後で推移し、2010年は1.96。)との差は、結婚適齢期の男女の未婚率に起因する。そして、その最大の原因は適齢期男性の低収入にあるのだ。
したがって優良な企業を誘致して、良質の雇用環境を地域に提供することが大命題になるが、第二次産業の海外展開に伴う雇用のロスが大きなマイナス要素なので、第三次産業での雇用創出も大きなポイントになるだろう。第一次産業の六次化は現在でも取り組んでいるが、マネジメントの人材確保や、商品の競争力、高所得を確保する、などの点で課題も多い。要は、長期安定的なビジネスチャンスを貪欲に地域に取り込んでいき、所得問題に続く環境整備に励むことに尽きるだろう。

人口減少問題に対して地方の立場からすれば、東京への一極集中も、結果的に大きな原因になっている。東京都の合計特殊出生率は1.13しかないのだ。ここのところは、我われ基礎自治体の努力では如何ともし難いところで、若者の低所得対策とか、地方への本社や事業所移転の場合の優遇税制など、政府としても実効性のある政策を断行してもらいたい。

復興もハード事業については概ね目途が立ってきた感があるが、原発の風評被害による第一次産業の危機は先行きが不透明である。原釜で育った私は原発事故直後から漁業の風評被害が一番長引くのではないかと不安だった。だから、決して弱音は吐くまい、大変だとは云うまい、と思ってきた。だがマスコミは私の願いをよそに、必要以上に誇大にしていった。浜の基幹産業である漁業が相馬市の人口維持・増大のために、一日も早く復活してもらいたいと願っている。

今年の6月議会である議員から、将来に対する人づくりを考えるべきだとの提言があった。これを受けて、市がバックアップして若者たちに地域振興やマチづくりの勉強をしてもらい、場合によっては他地域に研修に出して、見分と交流を深めてもらうなどの取り組みを始めることにした。年末に、商工会議所青年部、農協青年部、漁協青年部、市連Pの代表や、介護業界の若手の推薦者などなど30人からなる30・40代中心のこれからの相馬を背負う有望な人材に集まってもらった。名称は「相馬市青年団体連絡会」、略して相馬市青年団。 設立総会のあとの二次会で、漁協青年部から提案があった。「松が流された松川浦の対岸に、ソーラーで夜に光を灯す小さなユニットをいっぱい置いてみよう。東京の子ども達から募ればいい。松川から見れば向こう岸に無数の蛍がいるように見えるだろう。そして、ソーラーを取り付けた東京の子ども達を毎年呼べばいい。浦ホタル大作戦!」

地方創生については今までも地域振興という名目のもとに、最大限の努力をしてきたつもりだが、知恵と汗は絞れば出てくるものだ。こんな素晴らしい次世代がいるのかと思い涙がこぼれそうになった。
50年後の子孫たちの視点で今を見つめれば、生き残りをかけて東京との地域間競争に打って出なければならないときに、復興の途中だとか、原発の被害だとか、不幸に甘えていたのでは後世に済まない。

 

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